天然氷作りが歴史を感じる伝統技術といわれるのはなぜなのか?
現代では希少価値があり、貴重品扱いされている氷屋の天然氷は、かつては日本中で作られていました。冷蔵庫のなかった時代に、冬場に氷や雪を保存しておいて、夏場に涼を取るために利用していたのです。天然氷に関する記述は、奈良時代に編纂された「日本書記」にも出てきます。その後、平安時代になると、「枕草子」や「源氏物語」にも、天然氷を食べたり天然氷で涼を取ったという、記述が見られます。これらの書物に書かれていることから、天然氷はかなり昔から、使われていたことがわかります。
天然氷の生産は、明治時代以降に冷蔵庫が普及してくると、しだいに減っていきました。それでも、天然氷は昔ながらの製法で作られるために、歴史を感じる伝統技術と言われるのでしょう。天然氷は、山間地の池に良質な水を引き込んで、自然の寒さで徐々に凍らせて作ります。2週間以上かけて作りますが、その間は人がつきっきりで、氷の上に落ちた枯れ葉やゴミなどを、手で取り除きながら氷を育てるように作ります。すべてが手作業なので、まさに昔ながらの伝統技術と言えるでしょう。 |